僕が好きな2015年下半期のアルバムランキング
上半期のタイトルもちょくちょく混じってます。
ライヴはD'Angelo & The Vanguard、安室奈美恵、Shellac、L'Arc~en~Cielが特に良かった。D様は生涯でベストアクト。
30. Three wise monkeys / ECD
KGDR『空からの力』20週年パーティにillicit tsuboiと共に出てきたECDが「今日は今後出すアルバムからの新曲しかやりません」つった時にはマジかと思ったし、狂った音圧のトラックに乗せてもう殆どアジテーションの如き勢いで怒りに満ちた言葉を吐き出していくステージは尚の事マジかと思った。キレる50代。音源で聴くと話芸や漫談の調子を取り込んだラップが面白い。でもやっぱりアジってますよね、これ。
29. Levon Vincent / Levon Vincent
4枚組でリリースされたヴァイナルは即完、期間限定の無料配信も逃して途方に暮れていたので、日本限定でCD化してくれて大変有り難かった。それもこれもこの国のCD市場を支えてくださっている秋元康先生のおかげなんだよな。今日も秋元先生に感謝。「Launch Ramp To The Sky」の流麗な展開にテクノの美しさが詰まっている。
28. Tiny Pause / Yppah
Ulrich Schnauss系のエレクトロ・シューゲイズとギターの組み合わせが好きすぎるので、去年のTorn Hawkと同様にこちらも愛聴。優しくエモーショナルなサイケデリアの感覚は、Toro Y Moiの最新作とも通じている。
27. Star Wars / Wilco
2015年どのアイドル盤よりもキュートなジャケット。
26. Discreet Desires / Helena Hauff
Drexciyaの音楽からポスト・パンクの感覚を抽出・増幅したかのようなマシーン・ファンク~ロウ・ハウス。余白の多いサウンドながら、硬質な音がもたらすテクスチャとシカゴ・ハウス系のリズムが全体に緊張感を与え、全く間延びさせない。Actressが主宰する<Werkdiscs>からのリリースで、これまでFactory Floorのリミックスなんかも手がけていると聞くと、成る程ねという感じ。
25. Live & Glow / Casey Veggies
<OFWGKTA>出身の21歳によるメジャーファースト。柔らかくドラマティックなジャケットの素晴らしさに違わず、メロウかつブルージーなヒップホップ。TylorやTy Dolla $ign、YGやDej Loafといった存在感ある客演陣も、Caseyとの声とラップスタイルの違いで絶妙なアクセントをもたらしている。
24. Mutant / Arca
『Xen』にあった無重力感覚、意志のコントロールを離れた身体に対する不安が、攻撃性に反転したような金属音とノイズの乱舞。旋律のクラシカルな美しさが切実さを掻き立てる。KelelaとFKA twigsのプロデュース仕事も良かった。
23. Holding Hands With Jamie / Girl Band
The Pop Groupを初めて聴く時に「こんな名前なんだしきっと洒落たポップなんだろうな」と思って騙されたピュアなクチなので、当然「こんな名前なんだしきっとキュートなガールズ・バンドなんだろうな」と思い騙されました。
22. TRAPSOUL / Bryson Tiller
タイトルまんまでトラッピーなモダン・ソウル~ヒップホップ。深海に沈み込んでいくような音像が重苦しくも心地よく、元ネタの輪郭をドロドロに溶かすようなサンプリングの使い方も面白い。Tinasheの近作(というかDJ Musturd周辺)や、KOHH『MONOCHROME』が好きな人ならハマると思います。
21. 4 Walls / f(x)
Disclosure以降のポップ・ミュージックとして、ヴィジュアルのディレクションも含め、ほぼ完璧な一枚。これがメジャーシーンでヒットする彼の国が羨ましい。「4 Walls」「Rude Love」は殆ど毎日のように聴いた。
20. Agbara Orin / No Go Stop
Fela Kutiあたりの70'sアフロを継承したブリストルの12人編成アフロ・ファンク。6分〜14分尺の6曲で構成されているが、展開の多彩さ、演奏の熱量、うねるグルーヴいずれもハイエンドで、覚醒感全開で聴き通せる。土着的なビートを管楽器隊のジャジーな音色が彩り、エキゾチックなMarie Listerのヴォーカルが全体に色気を与えている。
19. AMON KATONA / RYKEY
フロウと声質が人を選びそうですが、切迫感のあるラップと読解しがいのあるリリックが良かった。プロデューサー陣も面白い。まあ私はYoung Hastleみたいな字義以上の意味なんてビタイチないリリックも大好きなんですが。おんなのこいいにおい。
18. Garden Of Delete / Oneohtrix Point Never
Arcaの切実さに比べ、随分遊びのあるというか、大人の余裕を感じさせる、これまでで最もポップな作品。初期NINをキッチュ化したかの如き悪趣味MV『Sticky Drama』を彩るたまごっちの山を見よ。
17. Weltschmerz / Totem Skin
スウェーデンのブラッケンド・ハードコアバンドによる2nd。ブラストビートとトレモロ・リフやスラッジ・リフの絡み、クラスティなDビート、轟音のさなかに垣間見える如何にも北欧的なメロディ・センス。それらに加え、(サウンド的には全然違うのだけど)カントリー的というか、土着的な力強さや勇猛さが溢れる骨太な作品。
16. Apocalypse, Girl / Jenny Hval
こういう白痴美人(すいません)スレスレのガーリィな声に弱い。
15. Key Change / Mocky
前作と違わず、愛すべきレコード馬鹿の愛すべきDIY盤。どこまでも暖かい音の感触で綴られたサバービアなジャズ~ソフト・ロック。愛聴。
14. Have You in My Wilderness / Julia Holter
基本的には『Ekstasis』『Loud City Song』のアート性の流れにあると思うのですが、華麗なハーモニーとポスト・クラシカルの要素を汲んだアレンジ、複雑な和声といったセンスはそのままに、ポップ・ソングのフォーマットを取り入れたことで一気に親しみやすく。ウィットあるMCを交えながら音の世界観を余裕で再現し切るライヴを観て滅茶苦茶好きになったし、この女と別れたDucktailsくんはマジ勿体無いことしたなと思いました。
13. 空-KARA- / 灰色デ・ロッシ
リリックにしろトラックにしろリズムにしろ、分かりやすいヒップホップ「らしさ」を放棄し、結果的に一種のポピュラリティを獲得している。言葉の精度と多層性は今年のシーンの中で随一じゃないでしょうか。
12. City / Stuart McCallum
元The Cinematic Orchestraのギタリストによるソロ作。メロディも含め、『Ma Fleur』に通じる部分は多いと思う。非常に多彩なギター・フレーズを折り重ねていきセッション風に仕立てるセンスが見事だし、リズムへの気配りもフュージョン的ダサさに陥るのを回避している。
11. Summertime '06 / Vince Staples
ミュージック・コンクレート的越境性を宿したノイジーなトラックでヒップホップをやっていた昨年のClipping『CLPPNG』は未だにちょくちょく聴いているんですけど、この『Summertime '06』も同様の新鮮さがあって、結構な回数再生しました。呪術的なアフロ・ビートをデジタライズしたような独特の質感のビート、それにかっちりハメつつメロウネスもあるラップが面白い。
10. Stargazer / Carmen Rodgers
タイトル通りしとやかに広がる星空と艶やかな夜の空気に満ちた激シルキーなスムース・ソウルで全編最高なんですが、中でもAnthony Davidのダンディズムに満ちた客演が光る「Charge」、ストリングスとピアノ主体で攻めながらやたら荘厳な「Love Stories」はヴォーカルの魅力が際立っていて良い。
9. #N/A / NISENNENMONDAI
上半期はgoatをずっと聴いていたので下半期は当然これ。人力マシン・ミニマリズムをAdrian SherwoodのダビーなミックスとRashad Beckerのエンジニアリングがアップデートし、鋭利かつ硬質な音が空間に乱舞する立体的な作品に。
8. ノーツ / ダニエル・クオン
耳に残る卓越したメロディと柔らかいアレンジがもたらす風通しの良さに反して、よくよく聴くととっ散らかった幻想小説のような印象を覚える。ポップ・ミュージックの断片を継ぎ接ぎにしたというか……それでも、随所に現れるフィールド・レコーディングの音が全てを纏め上げた時、違和感はメロディの彼方に軽やかに消え去っていく。
7. Abyss / Chelsea Wolfe
カリフォルニアのゴシック・ビューティによる5thにして最高傑作。トレンドを意識したのかどうなのか、これまでよりインダストリアル/ノイズ/ドローン成分が増え、異形のダーク・フォーク、ゴシック・ロックとなった。EARTHやChurch Of Miseryを髣髴とさせるドゥーム・サウンドの中を妖艶で儚げな歌が泳ぐ「Iron Moon」、Hope Sandval & The Warm Inventionsもかくやな耽美フォーク「Crazy Love」に漂うノイズと金属音の不穏さ、そして壊れたストリングスが彼岸へと誘う「The Abyss」と、抗い難いデカダンスに満ちた暗黒絵巻。
6. Padre / Isis Giraldo Poetry Project
コロンビア出身モントリオール在住の女性ピアニストによるプロジェクト。繊細なピアノの旋律をクラリネット、サックス、トランペットが彩り、 リズムは歌うように変幻する。アリア風の「Lágrimas y Auyidos」が美しすぎる。
5. You Love Me / 星野みちる
怪物的女優・前田敦子と現代のバルドー・小嶋陽菜、そして異能のポップシンガー・星野みちるを世に送り出してくれたAKB48結成10週年おめでとうございます。
4. Choose Your Weapon / Hiatus Kaiyote
マルチ・ディメンショナル・ポリリズミック・ギャングスタ・シット。ライヴだと複雑に変化するグルーヴをNai Palmのカリスマ性あるヴォーカルが先導し、音源よりロック色が強まっていてもう圧巻だった。しかし何でこんな最高にセンスフルな音楽作る人たちがこのジャケを……。
3. Renaissanse / ペトロールズ
10年の重みを感じさせる完璧なアンサンブル。3ピースの音とコーラスを基調にしながら、ここまで芳醇なファンクネスを鳴らせるものかと感動。長岡亮介のギター・ワークはもう楽器に取り憑かれたか呪われたかしてるとしか思えない。
2. Lotta Love / G. Rina
『漂流上手』のメロディと『Mushed Pieces』のビートがマリアージュしたGoodings Rina久々の新譜。シティ・ポップという言葉が凄まじい勢いで陳腐化しダサくなった2015年、そんなのどこ吹く風で都市と郊外を泰然と跳梁してみせるスウィートなモダン・ブギー・ファンク。
1. Valentine / ACO
ADELE『25』を入れなかったのはこれがあったから、というわけでもないですが、あのマルチ・ミリオンと同等に素晴らしい作品であることは間違いない。Amy Winehouseの亡霊が宿ったかの如き力強くも陰のある声が響く冒頭から、デビュー20年を迎えたACOの深化が見える。『LUCK』以降研ぎ澄まされてきたバンド・アンサンブルも素晴らしい力強さ。