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第Q交響楽

映画とか音楽とか。

僕が好きな2014年上半期の音楽ランキング

30枚ピックアップしましたが、取り上げていない傑作も多いですね。ぱっと思い付くだけであと20枚は出てきます。じゃあ書けよ。今年もまた豊作ということで。

余談ながらに書いておくと、上半期のベストアイドルソングは以下の通りです。
5. アンブレラシュークリーム / すイエんサーガールズ
4. ダイヤモンドは傷つかない -Rearrange Ver.- / 東京パフォーマンスドール
3. いいくらし / チームしゃちほこ
1. Do You Believe? / GEM
 

30. 時が奏でる / 蓮沼執太フィル

時が奏でる

どのパートも楽器の音色を存分に主張しつつ他を引き立て、開放感に満ちた心地よいメロディの奔流を描いている。concertという言葉の原義が調和や一致、そして呼応にあることを思い出せば、ここで鳴っているのは紛れもない協奏された音楽だ。雨上がりに陽光が射し込む街を歩くような楽しさに満ちた楽曲が多い中で、唯一物憂げな寂寞を宿した11分に渡る「ZERO CONCERTO」に胸を打たれる。巧緻極まる音の設計からポップスを紡ぐあたりの感覚は、Mice Parade『Obrigado Saudade』、もう少し遡ればTortoiseTNT』あたりにも通じている。

29. Ran Away From Me / Kwesi K

Ran Away From Me

アメリカン・カントリーのアーシーな感覚を得たKings of Convenienceというか……。アコースティックな音色に時折ジャズやファンクのパーカッシヴなセンスな絡んだり、爽やかなホーンが華を添えたり。渋味と透明感を兼ね備えた歌声も耳を奪う。

 

28. Nikki Nack / tUnE-yArDs

ニッキー・ナック

使われている楽器は少なく、過度なアレンジも無いのに、受ける印象はカラフルだ。リズムとビートの無限のバリエーション、そして意外性に満ちた音色の引き出しと自在な配置が、トライバルなサイケデリアを点描している。この感覚は初期のAnimal Collective、特に『Here Comes The Indian』と『Sung Tongs』を彷彿とさせるが、あそこまで躁鬱的ではなく、よりポップ。

 

 27. Page2: Mind Over Matter / SIMI LAB

Page2:Mind Over Matter【初回限定盤(DVD付き)】

流石に80分近い尺は長いのだけど、「Avengers」に代表される様に個性際立つMCたちのマイクリレーはパワフルだし、何よりOMSBのビートがキレている。日常的なトピックや感情から生まれるリリックがポリリズムのうねりの中で内省に至り、ラストの「We Just」でカタルシスとして解放される。

 

26. EYEHATEGOD / EYEHATEGOD

EYEHATEGOD (アイヘイトゴッド)

相変わらずのブルータルなスラッジコア。いい意味での間口の広さというか、ヘヴィでドープなロックンロールのピュアな格好良さも強く感じさせる。音質もクリアーで、サウンドのフィジカルな暴力性を克明に描写している。このあたりはクオリティの高さは昨年のChurch of Miseryに比肩する。全編通してゲロ吐くほど最高なんだけど、特にブルージーなキラーリフを真綿で首を絞めるかの様にダウンテンポで重ねていく「Worthless Resque」「Framed To The Wall」の流れは開拓者の凄味を見せつけられるようで、圧巻。

 

25. Food / Kelis

Food [帯解説・歌詞対訳 / ボーナストラック1曲収録 / 国内盤] (BRC411)

<NINJA TUNE>からのリリースと聞いてどんなビートが飛び出すのかと思っていたら、予想外にオーガニックなバンド・サウンド。ホーンやストリングス、オルガンが絡み合い構築された厚みのある音はゴスペルのようで聴き応えがある。イントロを飾るKelisの娘の声が象徴するように、祝祭的な雰囲気が良い。

 

24. Grenier meets Archie Pelago / Grenier meets Archie Pelago

グレニアー・ミーツ・アーチー・ペラーゴ

危うさを孕んだ美しいサックスやストリングスに、フューチャー・ジャズやミニマル、ブレイクビーツ、ディープハウス、ジュークなど広域射程で編まれたビートを絡ませていく。そのバランスは洗練されているが同時に先鋭的で、Archie Pelagoメンバーのバックグラウンドにジャズが屹立しているのが分かる。身も蓋もない例えをしてしまうと、よりダンスに接近したKammerflimmer Kollektiefといった趣で、つまり最高。 

 

23. Blank Project / Neneh Cherry

Blank Project

音色が極端に少なく余白が多い。それでいて軽さは全く無く、むしろ緊張感の充満した何とも不思議なサウンド。スロウでそしてひしゃげたベースとドラムの単調な反復が延々と続く中に、Neneh Cherryの年齢不詳の歌が乗る。フォークトロニカ以降の視点から、テクノやトリップホップをフィジカルに相対化したかのようにも聴ける。

 

22. THE SEASON / febb

The Season

おまえそもそも去年リリースされてる筈じゃなかったのか。

 

21. 戦前と戦後 / 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラー

戦前と戦後

名盤『New York Hell Sonic Ballet』でひとつの到達を見せた、狂騒的なダンスの官能を残り香の様に漂わせる中で、菊地のヴォーカルが全編をリードする。JAZZ DOMMUNISTERS以降のモードはOMSBやDyyPRIDE、ICIの客演でも明らかで、こうした異種混淆の猥雑さが映えるのはこのプロジェクトならではだと思う。

 

20. Triple Joker / RONDENION's RAGRANGE SYMPHONY

TRIPLE JOKER

オーセンティックなデトロイト〜シカゴを継承した音で、メンバー構成も含めて3Chairsの名を引くのが適当だろうけど、本人たちもこの例えには辟易しているかもしれない。単なるフォロワーというより、ルーツとしてのファンクやソウルが共振しているのだろう。ミニマル・ハウスの上に、謎のおっさんの"呑みなさい"というフレーズを延々とループさせた「Nominasai」が馬鹿馬鹿しくも洒落ていて好き。

 

19. Reality Testing / Lone

Reality Testing [帯解説・ボーナストラック2曲収録 / 国内盤] (BRC422)

彼らしい彩り豊かでドリーミーなプロダクションは健在だが、レイヴからは離れている。「2 Is 8」に顕著なように、本作の軸となっているビートはヒップホップ、しかもサンプリングを主体にした90年代的なそれだ。同時にURライクなシンセ使いやダウン・テンポも聴いて取れる。プリミティブではあるがレトロスペクティブではないし、何よりキャッチー。

 

18. Bless Off / THE SHRINE

Bless Off

傑作『Primitive Blast』に続いて相変わらずBlack Flag直系のパンキッシュ・ロックンロール。Black Sabathの如くストーナーなリフ使いやサイケなソロもありつつ、仕上がりはあくまでストリートの軽やかさに満ちている。スケーターたちがやっているバンドならではで、ライフスタイルがこうして音に滲み出ているのが最高にクール。

 

17. 月曜日と金曜日 〜Sugar Hi Jinnie〜 / 伊集院幸希

月曜日と金曜日 ~Sugar Hi Junnie~

ヴィンテージ・ソウルの匂いの中に迎え入れられたリリシストたちが伊集院のソウルに引っ張られて、歌心に満ちたラップを披露してくれるのが面白い。メロディアスなフロウで聴かせるMEISO、スウィンギンなファンクネスに乗ったBIG J.O.E.(”俺には必要ないAKB”ってパンチラインがズルい)、日活アクション『反逆のメロディー』のテーマを引いた世界観にマッチしたRUMIあたりは特に良いコラボレーション。バラエティに富んだトラック群も、軒並み極上の仕上がり。

 

16. White Woman / Chromeo

White Women

ディスコティックなリード・ベースにカッティングとシンセ、耳に残るフックが絡んでいく「Sexy Socialite」あたりは、さながらLarry Levanだ。豪奢で官能的で、同時に上品。近年のこうしたモードにおいてはBreakbot『By Your Side』と並ぶ傑作でしょう。特にグッと来るのはToro Y Moiをフィーチャーした「Come Alive」で、彼一流のチル・テイストが随所に表れてノスタルジアを振りまいている。ラスト、スムースなコーラスの連打に艶っぽい女性の声が重なるパートなんて、泣けるくらいに甘美。

 

15. car and freezer / 石橋英子

car and freezer

石橋英子史上最もポップな作品。これまで以上にシンプルで、同時にこれまで以上に複雑な楽曲群が何とも鮮やか。要は過剰という名の病気とは無縁の、強固で柔軟なバンドサウンドだ。石橋が手掛けた英語詞ver.もいいが、前野健太によるストレンジな日本語詞ver.が特に良い。言葉の意味を音に溶かし、聴き手の再解釈を促す様な石橋のヴォーカルとの相性が絶妙。

 

14. Unknown Nostalgia / AJYSYTZ

Unknown Nostalgia

いきなり『Vespertine』期のBjorkを彷彿とさせるナンバーから始まって面食らう。確かにヴォーカル五阿弥瑠奈の声にはアイスランドの歌姫の面影があるが、しかし類似を見るならば、声そのものより声を一つの楽器として扱い楽曲の世界観を構築しようとするスタンスにこそ、だろう。バンドサウンドによるエレクトロニカ的なアプローチ、音の流麗な点描は正しく「ポスト」であり「オルタナ」だ。そしてまた、美しいメロディを変幻自在に表現する五阿弥の歌が、ポップスとしての格をもたらしている。こうしたスタイルをこれだけのクオリティで成立させられるバンドは希少だし貴重。

 

13. Killing Me Softly / 東京女子流

Killing Me Softly (CD+Blu-ray) (Type-A)

これまでで最も統制の取れた4th。気怠く妖しいAOR調の「Killing Me Softly」、最新モードとしてのディスコティックに対する回答と言わんばかりに土方隆行のカッティングが炸裂する「pain」、弩級のニュージャックスウィング「運命」、そして新たなマイルストーン「Partition Love」という不敵な流れは興奮に値する。「Partition Love」の"子供のままじゃいられないよ"というパートから「W.M.A.D」で歌われた無邪気な"大人になんてなりたくない"を連想する時、両者の距離がそのリリック以上に大きいことに気づく。地続きでありながらも断絶している。12歳の女の子が15歳の少女になる、ということの果てしなさがここにある。

 

12. July / Marissa Nadler

July

典雅といっても過言ではない程に美しいメロディと歌声が支配するアシッドフォーク。シンプルながらも巧みにエコーを効かせ、彼岸の誘惑を呼び起こすゴシカルな深緑を音に纏わせたアレンジも素晴らしい。このあたりはSunn O)))Tim Heckerを手掛けてきたプロデューサーRandall Dunnの色もあるのかな。自身の声をヴェールの様にコーラスさせた「Anyone Else」の陰翳に満ちた妖艶さたるや、そのまま死にたくなります。

 

11. To Be Kind / Swans

To Be Kind [帯解説・歌詞対訳 / 2CD + 1DVD / 国内盤] (TRCP158~160)

幽世からもたらされた悪夢めいたロック。ゴーストと工業地帯、そこに人間の不均衡な精神を絡めてアメリカン・ゴシックな世界を錬成するDavid Lynchの映画作品にも通じる感覚。ここ20年くらいに渡り、Swansを始祖とするオルタナティヴなミュージシャンたちによってアメリカの地下で培養されてきたノイズやドローンが、百鬼夜行の如く作中に蠢いている。

 

10. GUSTO / Especia

GUSTO [CD]

これまでのリリースで貫いてきたソウル、ファンク、ジャズ、ディスコ、AORのアーバン折衷はこのフルアルバムにおいてより気怠くよりムーディに完全開花。既発曲も大胆にリミックスされた結果殆ど別物のフロア・トラックに。楽曲的にはもう非の打ち所がない。メンバーの歌割もバリエーションに富んでいて、ガールズグループの機能性がより活きている。

 

9. Backward Decision for Kid Fresino / Arμ-2

Backward Decision for Kid Fresino

サンプリング主体に構築された、香の焚かれたベッドルームで揺蕩うようなトラックがとても心地いい。客演のISSUGIが、一聴で彼と判るスモーキーなフロウでそんなムードを導入した後は、Kid Fresinoの不遜で、それでいて無邪気なラップが遊び回る。Arμ-2はJ Dilla的なビートメイクに加え、コーラスやフックも自身で散りばめていて、これが巧く作用している。

 

8. AURORA / Ben Frost

Aurora [帯解説・ボーナストラック収録 / 国内盤] (TRCP162)

サウンドのテクスチャに通ずるもののあるOneohtrix Point Neverとの一つの差異は、混沌に対するアプローチにあるだろう。高解像度の音塊をかっきりとレイヤードしていき、整然とした機能的な階層の生み出す美しい調和が、その機能性故に分裂症の如き様相を呈し始め、反調和へと至る様を描写する。OPN『R plus Seven』は高級なミルフィーユを咀嚼し、嚥下していくような作品だった。それに比して『AURORA』はよりエモーショナルで過剰だ。メロディアスなシンセとバリエーション豊かなノイズの断片で満ちた海の中で、機械的なインダストリアル・ビートが反復されていく。やがて、その最果てで収束したシンセとノイズが、狂おしいまでの轟音へと変貌する。この混沌は文字通りカオティック・ハードコアのそれと等しい。絶対零度の激情が紡ぐ電子音楽

 

7. ナマで踊ろう / 坂本慎太郎

ナマで踊ろう(通常盤)

ポリティカルな意思を隠さない「黒い歴史」の物語と、トロピカルなムードさえ漂う世界の終わりのサウンドトラック。

 

6. TRICKSTER / SKY-HI

TRICKSTER (ALBUM+DVD)

兎にも角にもスキルフルなラップに魅せられる。タメや巻き舌を交えながら間断なく繰り出されるライミングは、一つの音として抗い難くバウンシーだ。そして、そのフロウの中にありながらもリリックは明瞭に聴き取れる。立ち振舞の役者っぷりも含め、純粋に格好いいです。ヒップホップがまるで売れないこの国には、彼みたいなスタープレイヤーが必要だと思わせるに足る一枚。

 

5. Deep Fantasy / White Lung

Deep Fantasy

ナイフの刀身の如く鋭くそしてメロディックなギターワークが最高。Johnny Marrが激情系をやった、みたいなメランコリーの狂乱に飲み込まれる。ともすればクサくなりそうだけど、22分で爆走するハードコア・パンクのスタイルが全てをスリリングに纏め上げている。

 

4. Imprivm / Ictus

Complete Discography

スペインの伝説的ネオクラストIctusの2ndであり、今回取り上げた中では唯一のリイシュー作品。日本のディストロ/レーベル<3LA>が日英それぞれの対訳を付けて復刻した、言うなれば完全版のディスコグラフィに収録されている。1枚1曲36分の長尺でありながら、完璧な楽曲構成により張り詰めた、刹那たりとも気の抜けない緊張感。メロディックデスとブラックメタル系譜にある、攻撃的で哀切にも彩られたギターワークの鋭利さといったらもうエモーショナルの極北ですよ。詞世界は、タイトル通り、アメリカ帝国主義への怒りと批判に満ちている。ただ、怒りがもたらす衝動が根底にあるのは間違いないが、それを理知的で思慮深い言葉に替えて、ひとつの表現に昇華仕切っている。音だけ聴いても間違いのない名盤だったけど、今回のリイシューでこの世界観が掴めたのは大きな収穫だった。

 

3. Clppng / Clipping

Clppng

ノイズや環境音の断片のループの上でチープなリズム--リズムと表するのも躊躇われるくらいに弛緩した機械音--が刻まれている。耳に入ってくるのは紛れもなくヒップホップなのに、ジャンル要素からは逸脱している。ここには、例えばポップにおけるBrigitte Fontaine、ハウスにおけるHerbertを想起させる、ミュージック・コンクレート的な越境性が宿っている。ヒップホップとミュージック・コンクレートの近親関係が暴かれていると言ってもいい。そんなことをやっている割に、リリックにはギャングスタ・ラップへの憧憬、ワルにはなりきれないコンプレックスのようなものが垣間見えたりする。エッジーなトラックを余裕で乗りこなす鋭いラップも本物。

 

2. STARTING OVER / Dorothy Little Happy

STARTING OVER (ALUBUM+DVD)

ざらついたベースのリードにヤられる「COLD BLUE」も、メロディからリリックまで切なくなるくらいにキュートなピュアネスに満ちた「ストーリー」も、込められた桁外れのドラマツルギーに涙せずにはいられない「STARTING OVER」も、全部が素晴らしい。美しいメロディ、練られたアレンジ、伸びやかなコーラス。アイドルソングに必要な要素の全てが一級のレベルで揃った、見事なポップ・アルバム。過度なジャンル化をせず、王道を貫いてきたドロシーだからこその境地でしょう。

 

1. VIVID / CAMPANELLA

ヴィヴィッド

東海からドロップされた、現在のアンダーグラウンド・ヒップホップシーンが産んだ一つの成果であり、指標となる傑作。何しろ参加しているメンツからしてRAMZA、YUKSTA-ILL、TOSHI MAMUSHI、Fla$hBackS、OMSBにMARIA、BUSHIMIND、そしてMAKI THE MAGICだったりするわけで……。CAMPY自身のスキルも冴えていて、粘り気がありながら言葉をスムースに継いでいくフロウで魅せてくれる。特に「Mothership Connection」におけるMARIAとの丁々発止の応酬は最高に格好いい。また、この曲中でも"マジスゴい"と賞賛されているillicit tsuboiによるミキシングが実に狂っていて、振り切れた低音のヴォリュームがドープとしか表しようのないヘヴィネスを形成している。それでも重苦しさはなく、タイトル通りの鮮烈なイメージを残していく。2014年の匂いに満ちた、素晴らしきエヴァーグリーン。